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んまっ!と叫びたくなる山形の希少な雪りんご誕生の物語
2020/12/26

んまっ!と叫びたくなる山形の希少な雪りんご誕生の物語

山形県朝日町の「雪りんご」‌
朝日町の無袋ふじ(袋をかけない栽培方法で作られたふじで、糖度が高く、酸味もしっかりあるのが特徴)は近年認知度をあげているが「雪りんご」についてはご存知だろうか?‌

実は、この「雪りんご」は日本一おいしいと消費者から生の声をもらっている無袋ふじを雪の中に埋めて越冬保存させたりんごのことです。‌

全国の出荷量1%にも満たない朝日町りんごの中でも選び抜かれたりんごだけが雪りんごになります。その希少性と雪の中で長期保存されたりんごのみずみずしさとおいしさもあいまって、4月中旬の販売開始日に長蛇の列を作り、購入まで最長3時間待ち、さらに大渋滞を引き起こしたことで地元は大パニック。‌

雪りんご好きは手に入れたい知る人ぞ知るりんごです。‌

この記事は、その雪りんごがどのように作られているのか、どのような背景があったのかご紹介します。‌

この記事を読み終えると、きっとあなたも雪りんごが食べたくなるでしょう。‌


左:無袋ふじ 右:シナノゴールド

ひとりの農家が始めた雪りんご物語

雪りんご研究会の会長、志藤さん。この雪りんごをたった一人ではじめた農家です。どうして始めたのかを聞いてみました。‌

「空気神社で毎年6月に行われるお祭りの時に残っていた雪を使って何かできないか……。お供えしている朝日町産の無袋ふじを埋めてみよう」‌


左:雪りんご研究会会長 志藤さん

ひょんなことから今に続く雪りんごづくりがはじまりました。なお、空気神社とは空気の恩恵を忘れないため、世界に例のない空気を御神体とした神社のことです。朝日町の中でも標高の高い約600mのところにある神社のため、周辺の雪は春先まで残っているようなところです。‌


埋雪当日、空気神社の駐車場に集まった生産者

当初は、秋に収穫したりんごを雪の中に埋めることで6月のお祭りまで保存できるようにとはじまった雪りんごの取り組みですが、近年では暖冬や気候変動の影響もあり、残雪はもって4月中旬まで。‌

お祭りまでもたせることはできないから、販売してみてはどうかとなったそうです。こうしてここ数年、販売している道の駅あさひまちりんごの森に渋滞や賑わいをうみだす春に食べる雪りんごが誕生しました。‌


生産者たちが力を合わせてりんごを雪の土台に設置します

ただし、ここまでの道のりは平坦なものではありませんでした。‌

ひとりで始めたものの、ノウハウや知識・経験があったわけではないので試行錯誤の連続です。雪の中で動物に食べられてしまったり、雪の重みでりんごが潰れたり、コンテナ毎全て押し潰されていたり……。‌

4月に開けるまで中がどうなっているかわからないのです。最悪、全て商品化にならなかった年もあるとか。‌


隙間を作り、雪がまんべんなくりんごを包むようにして品質の均一化を図ります

そのような失敗の積み重ねの中でも少しずつ仲間が増えてきました。りんご作りにおいては他の生産者とのネットワークがありました。まわり近所に雪りんごの話をしながら一緒に挑戦する仲間を募っていったのです。‌

毎年少しずつ増えていく仲間と、毎年挑戦を重ねながらようやくたどり着いた安定的な雪りんごづくり。雪の中で動物に食べられないよう地面から1mほどの固めた雪の土台を作ったり、ネットを張ったり、雪に押しつぶされないようにコンパネを敷いたり、これまでの失敗を糧とした工夫が随所に見られます。‌


網を張り、シートをかぶせ、コンパネを敷きます

現在は15を超える農家が結集し、それぞれ収穫したりんごを持ち寄り、コンテナ約600ケースを一度に雪の中に埋めています。春に自分たちが作ったりんごに再会した時の喜びを分かち合っているのです。‌


春まで雪の中で越冬させるため雪をかぶせます

11月〜12月の旬の時期にいただくだけでもおいしい朝日町の無袋ふじですが、その無袋ふじをさらに手間暇かけて雪の中で保存することにより、一般的には旬が終わっている4月にみずみずしくおいしいりんごが味わえます。まさに、贅沢の極みですよね。‌

長い時間をかけて品質を高めてきた朝日町りんご。先人たちが積み重ねた知識や経験を受け継ぎながら、雪りんごという新たな価値をうみだしています。‌


雪をまとったりんごがまた美しい

「雪りんご」は今、雪の中で育ててくれた産みの親である生産者に再会できる日を、心待ちに越冬します。‌


寒いはずなのに、終始見入ってしまいました……

【予告】4月に雪りんご掘り体験企画中!

これまでは道の駅あさひまちで販売のみ行っていましたが、この度、朝日町観光協会と弊社DMC天童温泉のコラボ企画として「雪りんご掘り出し体験」を実施します!‌

4月に開封した雪りんごを、体験用の積雪スペースに再度埋めて、雪りんごを5個掘り出します。

完全100%のりんごジュースを目の前で、しかも自分で作って飲む経験はあまりありませんよね?さらに劣化が早いので、賞味期限は「秒」!その代わり、みずみずしさと甘さ、おいしさは格別です。‌

また、体験者限定で購入できる雪りんごのセットも検討しています。体験と合わせてご利用いただけば、紹介した雪りんごを食べることができます。‌

大人も子供も楽しめるので、ぜひご家族でお越しください。(もちろん、ご夫婦・カップル・お友達同士でもご参加いただけます)‌

2022年の雪りんご掘り出し体験はこちらから